
頭の回転といいアイデア発想といい、芸人さんは本当にすごいよね!
2021年M-1グランプリの芸人たちはどんな発想でネタを考えているのか?
昨年のここ数年、新しいネタの型がたくさん生まれており、その型が多くの人を魅了しました。ファイナリストに残るお笑い芸人のネタ発想にはどんな共通点があるのか?
年末のブログネタとして今年のM-1グランプリで特に面白かった1stステージを中心にまとめてみました。
M-1グランプリ2021
2021年のM-1グランプリ。長谷川雅紀(50)と渡辺隆(43)からなるお笑いコンビ錦鯉が優勝。6017組の頂点に立ち、17代目王者に輝きました。
吉本勢以外の優勝は、2002年ますだおかだ、2004年アンタッチャブル、2007年サンドウィッチマン以来。
今回のファイナリストは、インディアンス、真空ジェシカ、モグライダー、ゆにばーす、ロングコートダディ、オズワルド、錦鯉、もも、ランジャタイ、敗者復活を勝ち上がったハライチの10組。
お笑いには「型」がある
個人的に注目していたいのは、小ボケ連発で笑いを誘うインディアンスと、畠中のサイコパス感で東京漫才を確立しているオズワルド。
この2つのコンビはやっぱり面白いだろうという予想と合わせて、他のファイリナリストたちはどんな笑いの「型」で攻めてくるのか楽しみでした。

有名な「おかんが言うには…」だったり、とにかくボケがステージを動きまくったりとお笑いには「型」がありますよね

中川家のような正統漫才もあれば、笑い飯のような「二人ボケ」、白い方がボケまくりのNON STYLEなんか、やっぱり型だよね
近年は「漫才、漫才じゃない」問題の物議を醸し出したマヂカルラブリーや、今までにない新しい漫才の型で優勝をかっさらったミルクボーイなど漫才の型にとらわれないネタで優勝する傾向があったM-1グランプリ。決勝に残った3組の特に面白かった1stステージのネタを中心に、どんな共通点があるかまとめてみました。
決勝ステージに勝ち上がった3組のネタと感想
50歳おバカ大冒険「錦鯉」

錦鯉/SMA所属。長谷川雅紀(50歳/北海道生まれ)と渡辺隆(43歳/東京都生まれ)によるコンビ。12年結成。2年連続決勝進出で、昨年49歳の長谷川はファイナリスト最年長記録。
長谷川「こんにちはー」渡辺「コンバンワだよ」と昨年の巨人師匠の疑問に答える挨拶でスタート。50歳のおじさんが若者の合コンに参加したら…という設定。そこの女、お前名前なんていうんだ?という失礼な50歳おじさん、パティシエってなに?とボケているおじさん、つまらない一発ギャグを披露し笑えと強要、好きなアルファベットは6!乾燥したかかと見る?古今東西50歳過ぎたら体の痛くなる場所!〜膝!
なんておバカなネタなんでしょう…笑
錦鯉は昨年M-1に出場し存在をアピール。50歳という年齢を存分に生かして、若者とのギャップを作り圧倒的なバカキャラで笑いを誘った。設定が合コンというだけあって「こんな人いたらありえない」という状況を想像させ長谷川のキャラを掛け合わせ共感を生み出し終始笑いを量産していた。
3度目の正直で挑んだ「オズワルド」

オズワルド/吉本興業所属。畠中悠(34歳/北海道生まれ)と伊藤俊介(32歳/千葉生まれ)によるコンビ。NSC東京17期。14年結成。3年連続3度目の決勝進出。伊藤は女優伊藤沙莉の兄。
友達0のサイコパスな畠中とのやり取り。伊藤の友達が欲しいとありえない懇願する。
「友達になってるよ」という伊藤を否定しながら、友達でいらないやつちょうだい!お気に入りのズボンと交換しよ、グランドに一斉に解き放って、足が遅いやつをもらうから。双子はいない?ダブってるからあげレルわけじゃねーからなどなど…
とんでもない畠中のサイコパスなやり取りで終始笑いを奪い、最後は伊藤の「友達になってやる」という発言を否定し続けた畠中も「友達にはなれない。だって親友だから」でオチ。
オズワルドはアップダウンの少ないコンビかと思いきや、今年はテンポもあがり1stラウンドのネタは最高に面白かった。友達がいないという設定は、見た人が状況を想像できそうな切り口。またそれがサイコパス=怖いヤツというキャラが、「ありえない〜」と視聴者の共感をうみやすい設定。ネタ最中の「人差し指」という伏線も最後はビックピースという形でうまく回収。さすがというネタ構成で終始面白かった。
快速ぼけ特急「インディアンス」

インディアンス/田渕章裕(36歳/兵庫県出身)と、きむ(34歳/大阪府出身)2010年結成。吉本興業所属。M-1には9度目の出場で2回目の決勝進出。
怖い動画をみる趣味を共有しようと、さぁやってみようという設定からスタート。
こんぐらこんぐら、おっちょこ!最後まで言えよ!のつかみから、恐怖心のやつ東京行ったらしいな〜ビビれ!の掛け声にバビデブーとつなげたり、怖い写真を携帯で撮影、怖いと思いきやそれはスノーだろ…
「コロス」ケ、キテレツー優しさが行方不明→東京行ったらしいな→携帯捨てる→楽天モバーイル!なんか叫び声が聞こえるんだ→日本の携帯は高すぎる!で米倉さん想起。
人形の髪の毛が伸びる人形が最後にいう「お前たちは誰だ」に対し「どうもーインデアンスでーす」でオチ。ボケが多すぎてすべて書ききれない…笑
とにかくボケの数がすごい。テンポが素晴らしくこの畳み掛けの小ボケがインディアンスの魅力。テレビCMや若者のスノーまで田淵の小ボケは広い年齢層にも届く共感だらけの切り口。一見ボケが早すぎるので「なんだこれ」と思う視聴者もいると思うが、インディアンスの小ボケとツッコミの精度は年々上昇。アンタッチャブルを彷彿とさせるネタ構成は来年のM1で花開くことを想像してしまう。
お笑い芸人のネタに共通すること
審査員のコメントでも、松本人志は「今までこんなに悩んだことがなかった」、上沼恵美子「一番難しかった」オール巨人「悩みました」と決勝戦は本当に僅差の戦いだったことが伺える。
お笑い芸人に思うこと。
それはアイデア発想力が半端ないこと。共感を作り出すシーン設定や「あるある」と思わせる状況、小さな仕掛け。それが伏線となり全て繋がったところでオチになるストーリー設計は本当に見事。過去の王者たちを見ても、やはりそれぞれ笑いの「型」がありオリジナリティあふれるネタやキャラクターばかりです。
歴代のM1王者
年 | コンビ名 | 所属 | |
---|---|---|---|
第1回 | 2001年 | 中川家 | 吉本興業 |
第2回 | 2002年 | ますだおかだ | 松竹芸能 |
第3回 | 2003年 | フットボールアワー | 吉本興業 |
第4回 | 2004年 | アンタッチャブル | 人力舎 |
第5回 | 2005年 | ブラックマヨネーズ | 吉本興業 |
第6回 | 2006年 | チュートリアル | 吉本興業 |
第7回 | 2007年 | サンドウィッチマン | グレープカンパニー |
第8回 | 2008年 | NON STYLE | 吉本興業 |
第9回 | 2009年 | パンクブーブー | 吉本興業 |
第10回 | 2010年 | 笑い飯 | 吉本興業 |
第11回 | 2015年 | トレンディエンジェル | 吉本興業 |
第12回 | 2016年 | 銀シャリ | 吉本興業 |
第13回 | 2017年 | とろサーモン | 吉本興業 |
第14回 | 2018年 | 霜降り明星 | 吉本興業 |
第15回 | 2019年 | ミルクボーイ | 吉本興業 |
第16回 | 2020年 | マヂカルラブリー | 吉本興業 |
笑いがあるアイデアは強い
広告の打ち合わせでもよくある話。みんな大笑いするアイデアを着地させるととんでもない広告が生まれると昔から考えてます。
それほど強い広告はないと。
だからみんなが「それは無理だよ〜笑」というアイデアほど、着地させるためにどうするかの議論はあえて白熱させるのです。
今回の3組にある共通点。それは…
共感のシチュエーションとギャップ(違和感)が共存する世界観
を持っていることに尽きるのでは…と。
なぜ笑ってしまうのか?それは「わかる!」「あるある!」という共感と「いやありえないでしょう」という意味反するギャップがあるから。共感は自身の経験を重ね合わせて生まれるもので、その共感部分にありえないギャップが挟まっているとつい笑ってしまうもの。
4分で起承転結から共感を生み人々を笑顔にさせるお笑い芸人たちは、とんでもないアイデア発想力の持ち主であるに違いありません。来年のM-1グランプリではどんな共感を笑いに変換し生み出してくれるのか、今から楽しみです。
笑いがあるアイデアは本当に強い。だからこそお笑い芸人がプランナーになってくれるともっともっと世の中が面白くなりそうです。
アイデアのスイッチが学校で学べたらもっと面白い芸人が生まれるかもしれません。興味ある方はぜひこちらもどうぞ。
そもそもお笑い芸人って発想力がすごいと思わない??